2025年7月13日〜19日、大阪・関西万博 EXPO メッセ「WASSE」において「World Robot Summit 2025 フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ(FCSC)」が開催され、九州工業大学・北九州市立大学・北九州工業高等専門学校の学生で構成された連合チーム「Hibikino-Musashi@Home & Re@dy」が出場しました。「陳列廃棄タスク」の予選競技が3日間行われ、競技1・2日目それぞれ最高得点を記録し、Daily Winner賞を2回受賞しました。
FCSCは、自律型ロボットによる競技会であり、コンビニエンスストアにおける商品の陳列作業などの自動化を目的としたロボットコンテストです。本競技会は、「陳列タスク」と「陳列廃棄タスク」の2種目で構成され、両タスクの合計点により順位が決定します。今年度の大会には、昨年度のプレ大会を勝ち上がった8チームが参加しました。
本チームは、両腕を備えたロボット「Sciurus17」で本大会に臨みましたが、 準備期間中に、片腕の3Dプリンタ製パーツが破損し、競技1日目はやむを得ず片腕のみで競技に臨むこととなりました。この状況に対し、他チームから3Dプリンタをお借りしたり、急遽作成したパーツを北九州から会場に届けたりするなどの対応を行い、競技2日目には無事に両腕での競技が可能となりました。
このようなトラブルを乗り越えながらも、競技1日目、2日目の両日において「陳列廃棄タスク」で最高得点を記録し、Daily Winner賞を2回受賞することができました。
大会3日目(最終日)もロボットは安定した動作を見せましたが、他チームの追い上げもあり、惜しくも決勝進出には至りませんでした。しかしながら、本チームがこれまで家庭用サービスロボットで培った技術を、コンビニエンスストアという新たな領域に応用できたことは大きな成果といえます。
本チームは出場にあたり、商品認識のためのデータセット生成を用いた学習データ構築をはじめ、触覚センサを活用した「商品をつぶさない」把持制御、商品の骨格検出に基づく把持角度の推定、バーコードの認識による廃棄品の判定など、コンビニエンスストアでの実運用を見据えた技術を投入して競技に挑みました。
また、競技会と並行して、トヨタ自動車未来創生センター(以下、トヨタ)の全面協力のもと、本チームによるロボットデモンストレーションも実施しました。模倣学習用データの収集を目的とした操作デバイスを用い、従来の生活支援ロボットHSRよりも動作速度を大幅に向上させたHSRを操作しながら、未来のコンビニ作業を模した実演を行いました。このデモは、多くの来場者に最先端技術をご覧いただく貴重な機会となりました。
Hibikino-Musashi@Home 概要
Hibikino-Musashi@Home(主指導教員: 大学院生命体工学研究科 田向権 教授、副指導教員: 同研究科 田中悠一朗 准教授)は「人間と共存可能な家庭用サービスロボットの実現」を目標に、ロボットの開発に取り組んでいる学生プロジェクトのチームです。画像認識や行動生成などの人工知能開発を中心に、ロボットハードウェアの設計や制御など幅広い工学分野の知識を集結して開発に取り組んでいます。
また、ニューロモルフィックAIハードウェア研究センターにおける分野横断の研究開発が、ロボット応用の実装へ結びつき、日々その性能を進歩させています。さらに、経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する、国内の生成AIの開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」のもと、東京大学やトヨタなどと連携し、ロボットが自ら状況を判断し行動を生成する、ロボット基盤モデルの構築にも取り組んでいます。
九工大はNEDOの研究開発プロジェクト「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世 代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/ニューロモルフィックダイナミクスに基づく超低電力エッジAIチップの研究開発とその応用展開」(JPNP16007)に参画しており、レザバー計算の専用チップの開発やサービスロボット等への応用探索を推進しています。また、九工大では同窓会である明専会や企業と連携し、学生グループによる創造的なプロジェクトに対し、その活動を強力にサポートしています。
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