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世界初!新しいタイプの巨大磁気抵抗効果を理論的に発見!

更新日:2011.06.28

世界初!

新しいタイプの巨大磁気抵抗効果* を理論的に発見!

~電子の波乗り運動を磁場で制御する~


 九州工業大学の岸根順一郎准教授(理論物理学)は、このたび、ウラル州立大学のアレキサンダー・オブチニコフ、イーゴリ・プロスクーリン両氏らと共同で、カイラル磁性体*と呼ばれる磁石に弱い磁場をかけることによって電気抵抗を大幅にチューニングできる機構を、量子力学* の原理に基づいて理論的に発見しました。
電子ひとつひとつは実は小さな磁石であり、極微の棒磁石とみなせます。水晶、酒石酸のように左右対称性を持たない構造を持つ磁性体(カイラル磁性体)では、この棒磁石の配置がらせん状になることがあります。この状態に磁界をかけると、らせん構造が周期的にほぐれ、らせん構造に周期的な濃淡が入った格子模様ができます。このような構造の中を別の電子が走り抜ける様子を思い浮かべて下さい。電子というのは、波として空間を伝わります。これが量子力学の原理です。
電子の波は、ビール瓶に息を吹き込むと音波が共鳴するのと同じ現象を起こします。つまり、濃淡の格子模様の周期と電子の波が一致すると共鳴が起こって電子が進めなくなります。これが電子の定常波*状態です。磁界を調節すると格子模様のパターンを変化させることができるので、水道の蛇口を締めたり緩めたりするように電子の流れを調節することができるのです。
この効果を使えば、定常波のいろいろなモードに対応して多段階的に変化する電気抵抗値をメモリとして活用することも可能です。
今回の発見は、2007年度のノーベル物理学賞の対象となった巨大磁気抵抗効果とは全く異なる作動原理によるものであり、今後の進展が期待されています。

<用語解説>
磁気抵抗効果 : 磁場をかけることによって物質の電気抵抗が変化する効果。磁気抵抗効果を応用した磁
気ヘッドの登場によって、ハードディスクの容量が飛躍的に増大した。
カイラル磁性体: 人間の手のひらのように、鏡に映すと左右が反転する性質を持つ磁石
量子力学 : 原子や分子などミクロの世界を記述する物理学の理論
定常波 : 波長、周波数、振幅が同じで互いに逆向きに進む2つの波が干渉することによって形成
される進行できない波。


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(本件お問い合わせ先)

九州工業大学 大学院工学研究院

基礎科学研究系

 准教授 岸根 順一郎

(TEL・FAX)093-884-3420

 


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