文字サイズの変更
標準
閉じる

正20面体準結晶における強磁性相転移の臨界指数の同定に成功

更新日:2025.10.30

正20面体準結晶における強磁性相転移の臨界指数の同定に成功

国立大学法人九州工業大学大学院工学研究院基礎科学研究系の渡辺 真仁教授が研究代表者を務める東京理科大学、北海道大学、東北大学の研究グループは、正20面体準結晶*1の強磁性相転移*2を数値シミュレーションにより示すことに成功しました。これは3次元系の準結晶において磁気相転移現象をバイアスのない理論計算により示した世界初の結果であり、相転移を特徴づける臨界指数の同定にも成功しました。これは物性物理学における重要な研究成果であり、既存の周期磁性体やスピングラスとは異なる、準結晶に特有の新たな磁性の開拓につながることが期待されます。

ポイント

  • 3次元系の準結晶において磁気相転移現象を世界で初めて数値シミュレーションにより示した
  • 正20面体準結晶における強磁性相転移の臨界指数を同定することに成功
  • 周期磁性体やスピングラスとは異なる準結晶に特有の磁性の普遍性クラスを発見


鉄の磁石が示す強磁性のように、電子の磁気モーメントが結晶全体にわたって秩序化する磁気相転移現象は、原子が周期的に配列した周期結晶ではよく知られています。一方、原子が不規則に配列したランダム系では、低温で各原子における電子のスピンがランダムに凍結したスピングラス*3とよばれる状態が実現することが知られています。このような周期結晶やランダム系とは異なり、原子が非周期的かつ規則的に配列した準結晶とよばれる固体が存在しますが(図(a))、これまで準結晶においてどのように磁気相転移現象が実現するのか、理論的にはよくわかっていませんでした。



本研究では、正20面体からなる3次元準結晶(図(a))の磁性のモデル(ハイゼンベルグモデル)に基づいて大規模モンテカルロシミュレーション*4を行うことにより、強磁性相転移が起こることを示しました(図(b), 図(c))。さらに比熱や磁化、磁化率について有限サイズスケーリング解析を行うことにより、無限に大きい系での相転移温度Tc、および臨界指数*5を同定することに成功しました。その結果、周期磁性体やスピングラスとは異なる臨界指数を発見するとともに、準結晶における新しい普遍性クラスを見出しました。準結晶では各サイトの局所環境がサイトごとに異なるにもかかわらず、降温につれて相転移温度Tc以下で協力的に全てのサイトのスピン相関が発達する協力現象が生じることも明らかにしました。


今後、準結晶における磁性の実験および理論研究が活発に行われ、周期磁性体やスピングラスとは異なる、準結晶に特有の新しい磁性の開拓につながることが期待されます。

なお、この研究成果は、2025年10月28日(火)午後11時(日本時間)に米国物理学会のオープンアクセス学術誌「Physical Review Research」に掲載されました。


■ 用語解説



■ 論文の詳細情報


タイトル “Monte Carlo study on critical exponents of the classical Heisenberg model in ferromagnetic icosahedral quasicrystal”
著者名 Shinji Watanabe, Tsunetomo Yamada, Hiroyuki Takakura and Nobuhisa Fujita
雑 誌 「Physical Review Research」
D O I https://doi.org/10.1103/4zb8-2zjq

※ 本研究は JSPS科研費JP22H01170, JP23K17672, JP24H01675, JP19H05819, JP19H05818, JP24K08041 の助成を受けたものです。



プレスリリース本文はこちら


【研究内容に関するお問い合わせ】
 九州工業大学 大学院工学研究院
 教授 渡辺 真仁
 TEL: 050-1739-2101
 E-mail: swata*mns.kyutech.ac.jp

【報道に関するお問い合わせ】
 九州工業大学 管理本部総務課 広報係
 TEL: 093-884-3007
 E-mail: pr-kouhou*jimu.kyutech.ac.jp

 (メールは*を@に変えてお送りください)


学長室より
工学部サテライトサイト
情報工学部サテライトサイト
生命体工学研究科サテライトサイト
採用情報
九州工業大学基金サイト
明専会サイト
このページのトップへ