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卒業生対談



めまぐるしく変遷する現代社会。
そんな中、九工大生がしっかり歩いていけるよう、
大学の教育ができることは何なのか。
産業用ロボットで大きなシェアを持つ株式会社安川電機・小笠原社長と、
スマホゲームで世界中にファンを持つ株式会社コロプラ・馬場社長に
これからの仕事や九工大生が学ぶべきことを語っていただきます。


小笠原 浩さん
株式会社安川電機 代表取締役社長
工学部 情報工学科 卒業
松山南高等学校(愛媛県)

馬場 功淳 さん
株式会社コロプラ 代表取締役社長
情報工学研究科博士前期課程 情報科学専攻 修了
都城工業高等専門学校(宮崎県)


─どのような学生時代を過ごされましたか。


小笠原 私が工学部情報工学科に入学したのは1974年です。当時はまだコンピュータが世の中に出始めた頃で、最先端の技術や知識を学びながら、個人向け小型コンピュータの構想を考えていました。情報工学科には40人の学生がいましたが、同じ志を持ち、4年間一緒に学ぶ中で仲間意識が強くなりました。

馬場 高専で5年間電気工学を学び、情報工学部知能情報工学科3年に編入しました。大学や大学院では、CV(コンピュータビジョン)を研究したり、サーバー運用などのサークル活動をしていましたが、とても楽しく、ものすごく勉強になりました。今もその知識にバリバリ支えられています。


─人の仕事がAIに置き換わっていくと言われていますが、それを実感されることはありますか?


小笠原 私たちは人の大変な仕事をなくすために産業用ロボットや介護用装置をつくっています。簡単にできる作業はロボットに置き換わりますが、ロボットに指令を出す仕事は残り、知能集約型になっていきます。何かを生み出さないものは、機械やコンピュータに置き換えられていきます。それは仕事というよりは単なる作業なのかもしれません。今はまだAI にはクリエイティブなことはできません。何かをつくり上げる時の作業ベースを助けるものでしかありません。

馬場 おっしゃる通りです。過去にあったことから予測するのが現在のAI で、万能ではありません。人の仕事が消えるといわれていますが、いうほどは消えないと思っています。私自身は人々に楽しさを届けることが職業です。人の心をいかに掴むかという創造力が試される仕事がAI にとって代わられるとは全く思っていません。

小笠原 私たちのビジネスは7 割が海外です。海外では最先端のロボット技術を導入して全自動化し、大量生産することで競争力を高めています。中国ではそれがどんどん進んでいます。でも日本は多様化するニーズや市場の変化にフレキシブルに対応できるように多品種少量化に向かっています。一番効率がいいのは人がつくることですが、そこに人がいないことが問題になっています。

馬場 ゲームの世界にいると日本人の特殊性を感じます。海外向けにモバイルゲームアプリを配信していますが、国内向けとは違う内容です。日本でつくったゲームをそのまま海外に展開しても全然受けません。日本と海外では色使いやキャラクターの表情など、好まれるものがまったく違います。例えば日本ではかわいい女の子が好まれますが、海外では強そうなキャラクターが受けます。日本がいかに文化的に特殊なのかをまずは認識するべきです。その中で逆に日本の特殊性を活かした仕事が生まれてくればいいと思います。

小笠原 製造業も一緒で、日本の常識が世界では非常識なこともあります。日本で開発したものを海外に持って行っても売れるものと売れないものがあります。日本の常識を押し付けようとしてもうまくいきません。製造業の場合、アメリカはグローバルではなくてドメスティックです。グローバルな視点を持つためには、違う文化の中に入るのが一番いい。九工大にはGCEというグローバル・エンジニアを育てる教育制度が整えられているので、留学などにチャレンジするのもいいと思います。


─仕事で大事にされていることは?


小笠原 自分がワクワクするものをつくらなければ相手をワクワクさせることはできません。やるからには世界一を目指すことも大切です。これは当社の創業当時からのDNA ですが、私も若い人たちにいつも言っています。だからこそ競争が激しくなっても生き残っていけるのです。

馬場 ゲームというエンターテインメントを通して日常をより豊かにすることを目指しています。ゲームはワクワク感や楽しさがなければ商品にはなりません。でもつくる過程では、ライバルは多いし、開発費はかかりますし、厳しい社内レビューもありますし、大変なところをくぐり抜けていかないといいものはできません。ですが、つくる側の人間が楽しみながら仕事をしないとその気持ちは届けられないと考えています。そういう意味でクリエイター自身がワクワクや楽しさを常に持ち続けているかを社内で問い続けています。


─学生時代に身に付けておくべきことは?


小笠原 大学生活は長い人生の中の一つの通過点であり、就職がゴールではありません。いくら優秀な人でも就職がゴールだと思っている人はそこから伸びていきませんが、入社してこれから頑張ろうという人はものすごく伸びていきます。それから柔軟性も大切です。

馬場 大学では、上辺の技術だけではなく、基礎をしっかり身に付けることが大切です。それが全部応用につながっていきます。

小笠原 専門的な学問も大事ですが、学生生活の中で仲間意識や相手の立場で考えるといった人との関係づくりも大事です。クリエイティブな仕事をするためにはコミュニケーションがとても大切になります。

馬場 学生時代に身に付けておくべきことにデザイン力があります。見た目のデザインもありますが、どう使うかまでを含めた総合的なデザインです。残念ながら、エンジニアはうまく動くものをつくれても、それがどう使われるかまでは想定できない人が多い。だから、ここは学生時代に絶対やっておいたほうがいい。九工大はエンジニアリングのデザイン教育にも力を入れています。さまざまなことに興味を持ち、挑戦してください。


これからの時代、グローバルで活躍するためにはエンジニアとしての専門性とともにコミュニケーションやデザインなど広い視野が必要になります。
九工大には、さまざまなことに挑戦できるフィールドがあります。


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