イノベーション推進機構 産学連携・URA領域

九州工業大学の研究者 -私たちはこんな研究をしています-

情報工学研究院

准教授

引間 知広

ひきま ともひろ

所属
情報工学研究院
生命化学情報工学研究系
プロフィール
1967
生まれ
1996
博士(情報工学)
九州工業大学
1996
九州工業大学大学院
情報工学研究科
博士後期課程情報科学専攻修了
1993
九州工業大学大学院
情報工学研究科
修士課程情報科学専攻修了

現在、病気を治療できるが、副作用が強すぎて使用できないという薬物が多く存在しています。こうした薬剤は投与方法を工夫することで、副作用を減らすことができます。こうした投与方法の改良の結果として、治療可能な病気を少しでも増やしたいと思ったことがきっかけです。

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人間にやさしい経皮治療システムの開発

● 研究テーマ

  • ❖経皮治療システムの研究

● 分野

治療システム、ドラッグデリバリーシステム、MEMS

● キーワード

経皮、代謝、DDS、TTS、イオントフォレシス

● 実施中の研究概要

薬を体内に投与する方法は、口から飲ませる経口投与や、注射や点滴などで直接投与する方法があります。しかし、前者は、薬物によっては消化管・肝臓の代謝(注1)を受け、効力を発揮できず、後者は、薬効が長時間維持しない上に、痛みを伴うので患者の負担となるなどの問題があります。
そこで、本研究室では薬物を効果的(注2)に目的部位に送達するDDS(Drug Delivery System)の一つであり、薬剤の皮膚吸収・透過作用による経皮送達システム(TTS:Transdermal Therapeutic System)について研究しています。TTSには、薬物が目的の部位へ送達する前に肝臓での代謝を受けない、長時間の連続投与が可能で、最小限の薬物量で効果を発揮できるなどの利点があります。その反面、角質層が物理的障壁となり薬物の速やかな透過を妨げる、皮膚内の酵素により代謝を受ける可能性がある、有効血中濃度に達するのに時間がかかるなどの欠点があります。当研究室では、電場や超音波などの物理化学、ナノエマルジョンなどの製剤学、マイクロニードルなどのMEMS(注3)に基づいた研究の応用により、これらの欠点の解決に取り組んでいます。
代表例として、イオントフォレシス(iontophoresis)法(電場を利用した薬物の体内への透過促進法)があります。この方法は、皮膚間に電流を流すことで電位勾配を与え、その電位勾配によりイオン性の薬物を透過させるものです。また、イオン性の薬物だけでなく、水の+極から-極への移動に伴う非イオン性薬物の透過も促進することができます。 さらに、イオントフォレシスには電場を逆転するリバースイオントフォレシスがあり、この方法を使うことで薬物を体内から取り出すことも可能です。
現在、電場と超音波を併用して薬物の皮膚吸収を促進する方法(図1、図2)や薬効のある親薬物に化学修飾を加えることで体内への透過を促進し、その後体内で親薬物に変換し薬効を発現するプロドラッグに関する研究や、 薬物の皮膚内での代謝や結合現象解明のための研究も行っています。さらに、動物愛護およびヒトと動物の種差の問題を解決するため、ヒト三次元培養皮膚を用いた動物実験代替法の提案を目指して研究を行っています。
(注1)代謝:薬物の親水性を高め分解・排出する働き
(注2)効果的:送達する場所、時間、量のコントロールが必要
(注3)Micro-Electro-Mechanical Systemsの略。日本語では微小電気機械素子と表現することもある。日本でマイクロマシン、ヨーロッパでMicrosystem Technology (MST)と呼ばれるものもほぼ同じ内容です。

● 今後進めたい研究

経皮治療システム(TTS)の高度化研究

● 特徴ある実験機器、設備

TTS11_貼付剤製造装置
(引間知広、因昭一、中村昭範、東條角冶.経皮治療システム用貼付製剤製造装置の開発.膜、32(2):116-119、2007.)
薬や布、フィルムの組み合わせをいろいろ選び、自動的に製造することができる。

● 過去の共同研究、受託研究、産業界への技術移転などの実績

▶イオントフォレシスを用いたエマルションの浸透促進効果の研究(2008)
▶微細針を用いた経皮吸収型製剤の研究(2008)
▶動物寄生害虫駆除剤の開発(2002)

● 研究室ホームページ