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学長メッセージ~慎重さと寛容な気持ちを持ち、結束して新たな未来づくりを~

更新日:2020.5.27


学長メッセージ ~慎重さと寛容な気持ちを持ち、結束して新たな未来づくりを~


学生のみなさん

九州工業大学長

尾家 祐二

本学は、政府が4月7日に発出しました緊急事態宣言、およびその後の福岡県による緊急事態措置の重要性および趣旨を重く受け止め、これまで対応してまいりました。具体的には、今年度の授業開始日を5月7日まで遅らせ、かつ大学への入構を必要最小限に抑えるなどの措置を行うなど、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めてまいりました。

福岡県では5月15日に緊急事態宣言が解除され、この度、5月25日には全国的に、緊急事態宣言の解除がなされました。ただし、福岡県からの要請では「徹底した感染対策を実施する」ということが条件になっています。大学は非常に多くの人々が集う場所です。本学は、3キャンパスにおいて、6,000名を超す学生諸君、職員、関係される様々な方々が活動しています。さらには、これまで産業界との交流、海外をはじめとした他大学との交流を促進し、多様な人達が集うキャンパス作りを目指してきました。今後においても、感染の第2波等が予想されており、大学として引き続き新型コロナウイルス感染症拡大防止に配慮し、段階的な規制の解除を行っていくことが必要と考えています。

今後、第1クオーターの授業は引き続きすべて遠隔授業とし、第2クオーターにおいても、原則遠隔授業といたします。第2クオーターにおいては、遠隔授業に適さない実験・実習等の授業科目については、キャンパス内において対面で行うこととなりますので、大学からの通知等を参照してください。また、部活動、サークルなどの課外活動については、感染防止対策を実施しながら、順次、開始できるようにいたします。諸施設の利用についても、通知を参照してください。

なお、現在、第1クオーターの開講科目(学部275科目、大学院104科目)の全科目が遠隔授業で行われています。このような大規模な遠隔授業は初めてのことですので、学生のみなさんに対して、ネットワーク環境および遠隔授業の満足度についてアンケート調査も行いました。3,090名の回答結果(5月26日現在)では、遠隔授業に大変満足している・満足しているという回答の割合がおよそ60%程度、満足していないという回答は8%以下でした。さらに改善に努めますので、ご意見・ご要望など学務課教育支援係までメールにてお寄せください。

この困難な時期は、改めて、様々なことに関心を持ち、学び、考える機会ともなります。まず最初に、ウイルスについて考えてみたいと思います。新型コロナウイルスとの戦いは長期戦が予想され、さらには、共生していく覚悟が必要になっています。人類は、様々なウイルスとはるか昔から関わり、多くの犠牲者を出しています。人類が根絶できたのは天然痘ウイルスによる感染症だけで、1980年にWHOによる撲滅宣言が行われました。日本でも、江戸時代に、天然痘の種痘の普及に尽力した医者に関する小説もあります*[1]。また、ショッキングな内容ですが、我々のもつ遺伝子の中には、ウイルス由来の遺伝子があると言われています。ただし、一方でそのことによって、胎盤を形成するという新たな機能を備えることが出来ていると言うこともできます*[2]。細胞も持たない小さなウイルスですが、非常に多種多様な種類があり、特性が解明されていないウイルスもまだ多く存在します。このような中で、生活する際には、勇敢さというより慎重さ、思慮深さが大切になります*[3]

もう一つの話題は、情報通信技術(ICT)です。今回の感染症拡大によって、ネットワーク経由で、様々なことが行われるようになりました。みなさんが現在受けている遠隔授業もその一つです。英国の経済紙「エコノミスト」では、ICTによって、「距離は死に、位置が重要になる」*[4]と指摘されていました。そして、今、移動できない私たちは、ネットワークの力を用いて、まさに相手との距離を“0”にしなければならなくなりました。今後、生活様式は一変することでしょう。このような技術への理解と技術が可能にする新たな世界に関する想像力、共感力が大切になります。

最後に、この危機に際し、2019年の新年のご挨拶で紹介しましたブッシュ第41代米国大統領の大統領就任演説の言葉を改めて紹介したいと思います。それは『危機的な問題については、結束を。重要な問題については、多様性を。あらゆる問題について、寛容を』、です。今こそ、分断、孤立ではなく、結束し、多様な考え、感性を備えた人たちで知恵を出し合うことが大切になります。

本学は、このような状況においても、学生諸君、職員、関係される方々の安全を第一に考えながら、大学の機能である教育、研究およびそれに基づく社会貢献に関し、良質な活動を実施していきたいと考えています。状況を確認したうえで、慎重に判断し、制約を段階的に解除していきます。現在の状況を理解いただき、協力をお願いします。くれぐれも健康に留意して過ごしてください。皆さんの活力がこのキャンパスに溢れる日を楽しみにしています。

[1] 吉村昭著「雪の花」新潮文庫刊
[2] フランクライン著「破壊する創造者-ウイルスがヒトを進化させた-」早川書房
[3] 例えば、シェークスピア著「ヘンリー4世」の第一部最後フォルスタッフの以下のせりふは興味深いです。
  The better part of valour is discretion; in the which better part I have saved my life.
[4] 英『エコノミスト』編集部「2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する」文春文庫


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